2009年9月14日月曜日

よくわかる (かもしれない) 建築学

この記事のオリジナルははてなのhakaseグループ日記に書いた「よくわかる(かもしれない)建築学」です。なんとなく持ってきてみました。

建築学はおおまかに次の3つの分野に分かれています。
  • 計画系 ---- 室配置などの平面計画、都市計画、意匠、建築史などに関する研究。
  • 構造系 ---- 鉄筋コンクリート構造などの各種構造や材料関連の研究。
  • 環境系 ---- 熱環境、空気環境、音環境、光環境などに関する研究。
日本建築学会が出版する学術雑誌である日本建築学会論文集もこのジャンル分けに従って「日本建築学会計画系論文集」、「日本建築学会構造系論文集」、「日本建築学会環境系論文集」の3つに分かれています。また、大学の建築系専攻での研究もこの3分類がベースになっています。

計画系は建築学科における花形分野で、安藤忠雄や隈研吾が東大の建築学科の教授やってたり、高松伸が京大の教授やってたり、と「スター教授」がいることも多いです。僕が学生だった時は、計画系の研究室は4回生の研究室配属や大学院入試で人気が集中することが多く、「狭き門」になってました。多分、今もそうだと思います。
ちなみに海外で architecture というとこの分野を指し、engineering とは別物と考えられてます。また、architecture は多くの場合独立した学部で教えられています。

構造系は、純粋に構造計算をやる「構造力学」、各種材料で構成される構造物の構造計算について研究する「鉄骨構造」、「鉄筋コンクリート構造」、材料の力学的特性などについて研究する「建築材料」などの分野に細分されます。また、地震などに対抗するための耐震構造などの研究もこの分野。僕が学生時代に講義を受けた某教授によると、「機械とちがって動かないから、建築の構造力学は簡単」ということらしいです。
海外だと、建築構造力学は civil engineering (土木工学) の一部になってることが多いです。

環境系は、建物内外の熱、空気、音、照明、色彩などが研究テーマ。取り扱うテーマは、各種環境に対する人体の生理反応とか、省エネ住宅のための空調機器の最適制御問題とか、室内照明に対する心理評価とか、かなりバラエティに富んでいます。逆に言うと、あまり建築っぽくない分野でもあります。僕も照明や色彩に対する心理評価に関する研究をやってたんですが、「建築の先生に研究の話をしてもあまり受けないけど、認知心理の先生には受ける」、「研究のための参考文献を探すために、建築学科ではなく文学部の図書室に入り浸る」などの現象が起こっていました。
あと面白いのが、火災関連の研究も環境系に入るということ*2。火災の熱によって鉄筋コンクリートの柱が水蒸気爆発を起こす、みたいな現象の解析をやってたりします。昔、なぜ火災関連が環境系なんだろう、と思って知ってる先生に聞いてみたところ、「温度差の桁が2つぐらい違うけど、現象としては、空調時の壁体内の伝熱と同じだから」という話でした。
海外だと、building science と呼ばれていて、建築学部の一部という扱いになってることが多いようです。
さて。日本の大学の建築系学科の場合、建築士試験の受験資格との絡みもあって、計画系、構造系、環境系のそれぞれについて、バランスよく履修することが求められます。「デザインやりたいから」という理由で建築学科に入ったとしても、基本的な構造計算ぐらいはやらないといけないということです。
また、研究レベルでも、例えばコンクリート内部の熱水分移動*3に関する研究で構造系と環境系の両方の知識が必要になる、みたいなことが起こります。
というわけで、院生時代からあまり建築っぽくない研究を続けた挙句、建築とは関係のない職場に転職してしまった僕のような人間でも、一応図面は描けるんだぜ、というお話でした。

2009年1月31日土曜日

Lux Pacifica 2009が開催危機→代替開催が決定

タイ国内での代替開催が決まったそうです (お知らせ)。

照明学会のWebサイトでもお知らせがでてますが (多分、1月30日の昼間に公開)、2009年4月23~25日にハバロフスク(ロシア)で開催予定だった Lux Pacifica (環太平洋照明学会) 2009 が「開催が困難な状況」ということだそうです。事態収拾に向けてルクスパシフィカ国際組織委員会では折衝中。
「航空券などの手配やロシア照明学会への支払いを中止してください.」という記述もあったり、お知らせのファイル名が
"090423lux_cancel.html"
だったりするので、ほぼキャンセルということになるのかもしれませんが、詳しい状況などについてはこんな辺境のブログではなく、照明学会からの情報を確認してください。

開催まで3ヶ月切った時点でいきなり国際学会がキャンセルというのも、世界的に経済情勢がアレなことになってるからしょうがないか……とかいって「あきらめモード」になるのはよろしくないのであろうなあ。

2008年12月29日月曜日

ブログ界における科学の誤用について

いわゆる「アルファブロガー」の人たちのブログ読んでると、既存の科学の知見を無視していたり、誤解していたり、ということが最近ちょっと多くて気になります。

例えば梅田望夫は「水村美苗「日本語が亡びるとき」は、すべての日本人がいま読むべき本だと思う。 - My Life Between Silicon Valley and Japan」というエントリで、社会言語学の知見を全く無視、という暴挙をやらかしてます。また、dankogaiは「404 Blog Not Found:もはや心理物理学 - 書評 - 心の脳科学」というエントリで、「心理物理学」という100年以上の歴史を持つ学術用語を完全に誤用しています。

これで梅田やdankogaiが勝手に信頼を失うだけなら、それは自業自得なんで僕にとってはどうでもいいことです。ただ、梅田やdankogaiみたいに影響力が大きい人がこういうたわ言を書いてると、言語学なり心理物理学なりについて知識のない人が読んだときに「心理物理学というのは、こういう学問なのか」と勘違いされたりするのが怖いんですよね。

dankogaiの貢献にまったく触れずにPerlの多言語処理について論じても無意味だと思うし、何となく言語を処理してるように見えるだけの中途半端なPerlコードに勝手に "encode.pm" という名前を付けてばら撒いたりしたら無用な混乱を招くと思うんだけど、同じことを科学に対してやってもいい、と思うのは、相当な無神経だからなのか、相当なバカだからなのか、どちらかなのでしょう。

で、こういう人たちに社会言語学の知見や心理物理学の正確な概念を伝えることができないんだから、インターネットという「知の高速道路」も使い方知らない人には大して意味を持たないんだろうな。

個人的には心理物理学の周辺分野でずっと研究者やってたんで、dankogaiのエントリはタイトルだけ見た時点でかなりむかついた。

2008年10月13日月曜日

WTC7


9.11テロで発生後約8時間後に崩壊したWTC7の崩壊メカニズムについて、NISTの公式な見解が出たようで。オリジナルの報告書をきちんと読み込んだわけではありませんが、火災が起こって高温になったら弱くなる、とか、梁が外れて柱だけの状態になったら座屈が起こりやすい、とか、見事に鉄骨造の弱点が出てしまったようです。

崩壊の大まかなメカニズムはテロ直後に建築学科の関係者の雑談でも出てたし、9.11テロの直後に開催された日本建築学会の特別セッションでも話題になってたし(ケンプラッツの記事)、というレベルの話なんで、それが確認されたというのが今回の報告書の新しいところかな? 個人的には、柱と大梁の接合部とか梁の被覆とか、防災上ポイントとなるべきところの貧弱さにちょっとびっくり。

……というのはいいとしてだな、ケンプラッツのコメント欄にも陰謀論者が湧いてます。もはや恒例行事。で、「建築の素人が見ても、今回のNISTの調査報告書はデタラメです。」とか、香ばしいセリフを残してます。NISTの調査報告書に対してきちんと反論できるのに「建築の素人」というのは謙遜しすぎだと思うんだけど。

2008年8月2日土曜日

gcc 4.3.1 を Windows で使ってみる

Windowsで使える gcc (Gnu Compiler Collecition) というと、mingwcygwin というのが相場でありまして、フリーなIDEとして有名な Eclipse のC/C++用プラグインである Eclipse CDT も、mingw と cygwin には対応してます。

……が、しかし。mingw、cygwin ともに含まれている gcc は2005年11月リリースの gcc3.4.5 あたり。最新の gcc は 4.3.1 (2008年6月リリース) だから、ちょっと……というか、かなり古い。Windows でも "-march core2" (← 4.3.x 以降で使える最適化オプション) とかやってみたいので、いろいろ探してると、Equation Solution という会社が Windows 向け gcc バイナリ を配布しているのを発見。安定版の 4.3.1 だけではなく、開発版の 4.4.x 系列も配布してます。Equation Solution って聞いたことない名前なんでちょっと不安はありますが、ニュースグループの comp.lang.c でもたまに名前が出てるみたいだし、comp.lang.c での質問に対する対応なども割とちゃんとしてる印象なので、まあ大丈夫でしょう。

ということで、早速ダウンロード。ダウンロードしてきたファイルはインストーラになってまして、普通に実行すればそれでおしまい。環境変数の設定などもやってくれるので、インストール終了後に再起動すればコンパイラが使えるようになってます。OpenMP にも対応しているので、並列化プログラミングとかもばっちり。

もし gdb (Gnu Debugger) などのデバッガーを使いたいなら、インストールが終わった後に以下のファイルをダウンロードページで配布されているファイルに手で入れ替える必要があります。

  • gcc.exe

  • gfortran.exe

  • g++.exe

  • c++.exe


さらに、Eclipse IDE for C/C++ Developers なり NTEmacs なりを別途インストールすれば割とそれっぽい開発環境が整います。本格的な Windows アプリの開発はできませんが、結構いろいろ遊べそうです。

ちなみに mingw の公式サイトでの情報によると、4.x.x 系列の gcc は Windows 上での動作に問題あり、ということらしいので(←ソースが見つからない)、インストールされる方は気を付けてください。どう気を付けたらいいのかよくわかりませんが。あと、Equation Solution の素性がいまいちよくわからないのもちょっとリスク要素かな? ということで。

2008年7月2日水曜日

今さらかよ

まさか2008年にもなって「アポロが月に行ってなかった」というヨタ話をゴールデンタイムの番組で堂々と取り上げた上、副島隆彦まで出すようなアホがいるとわ……。ちらちらと見てはいたんだけど、あまりのひどさに途中で見るのをやめた。これを我慢して見れるようになれば、立派なトンデモ・ウォッチャーになれるのかもしれませんが、僕には無理ですわ。

アポロの映像については、僕も現地ロケの作りものだと思っています。

2008年6月18日水曜日

XREAのセキュリティ問題について

無料ユーザー向け広告配信サーバーの不具合について - XREA&CORE SUPPORT BOARD」……という情報が xrea.com から出ております。
このため、無料ユーザー様のページ内に自動挿入される広告を表示した際で、
主要広告以外の広告が表示された場合に、正常に広告が表示されず、ウィルスを配布するページへ
自動誘導される状態になっておりました。

ということなんで、「不具合」なんて生ぬるいタイトルじゃなくて、セキュリティ問題としてきちんと告知すべきだし、オフィシャルなコメントももっと早くから出すべきです。

y4su0.com に関しては XREA を使ってはいるんだけど、有料ユーザー = 広告配信はなしなんで、今回の問題は直接関係ないんだけど、今回の対応はちょっと気になるなあ。